■越前焼
越前と聞いて思い浮かぶのは、荒々しい波の立つ日本海に、カニなどのおいしい海の幸。
そして忘れてならないのが越前焼です。
ここ福井県にある越前焼の窯は、いわゆる六古窯のひとつになっているのです。
数ある全国の陶器の中でも、よく知られた名前ですよね。
全国の陶器はそれぞれに地域ごとの特色があり、地元の風土や人柄までも表現しているものがあります。
この越前焼でも陶土はすべて地元産の土でまかなっており、冬の厳しさに耐え抜く腰の強さが器にもあらわれています。
越前の土はガラス質を多く含んだ独特のもので、釉薬が乗りにくい性質を持っています。
通常の陶器であれば、釉薬を掛けないと水漏れしやすいなどの欠点が出てきてしまうのですが、越前の土を使って焼くと高温焼成によってガラス質が隙間を埋め、硬く緻密に焼き上がります。
そのため、釉薬を使わず1300度以上の高温で焼き締めるスタイルが、創始以来の越前焼の基本形となっています。
土の腰の強さと並んで越前焼の特徴とされるのが、紐づくりと呼ばれる成形法です。
人の腕ほどの太さがあるひも状の土を肩にかついで、土台の周りを回ってぐるりと巻きながら器を形作っていきます。昔ながらのこの手法を守り続けている人として、藤田重良右衛門(じゅうろうえもん)氏がよく知られています。
最近では食器も多く作られ、若い人にもなじみがあるであろうビアマグは、ヒットを呼びました。
越前焼特有のざらざらとした肌合いのビアマグにビールを注ぐと、泡のキメが細かくなりクリーミーな泡が長持ちするようです。
越前焼に、そしておいしくビールを飲む方法に興味がある人は、一度お試しください。
■信楽焼
誰もが見たことのあるたぬきの置物、これも立派な焼き物です。
全国の陶器市などにでかけても、かわいらしく愛嬌のある表情で店先を行く人の心を和ませているたぬき君たちですが、彼らのふるさとは滋賀県信楽町にあります。
信楽町は滋賀県の最南部に位置し、緑豊かな山林地帯が広がっています。
そこに自生するアカマツが陶器の焼成に使う焚き木として適していたことも、この地域を焼き物の町として発展させたひとつの要因と言えるでしょう。
この信楽の地で採れる土には粘りがあって腰が強く、高温にも強いため、小さくて精巧なものから大きくて丈夫なものまで、じつに信楽焼は幅が広く、多種多様に焼かれています。
またこの粘土には長石や石英などが多量に含まれるため、これが焼成時に器の表面に吹き出して、信楽独特の白いぶつぶつした肌合いの器が出来上がります。
全体的に粗い素朴な感じがするのは、陶土を水で漉して細かいものだけを残す、という処理を行なわないためです。
これも信楽焼の製法のひとつの特徴と言えます。
現在の信楽焼では、傘立てや食器、置き物、植木鉢、タイルなど、ジャンルにこだわらずに焼かれ、常に人々の生活とともに生きてきた焼き物であることが伺えます。
小石の吹き出した土肌、のびのびとした形、高温で焼くことでできる自然釉の風合い、など、素朴で平凡であるがゆえにその魅力にはまってしまう陶器好きも多いと聞きます。
全国の陶器の産地をめぐる旅も楽しいものです。
信楽の町に出かけると、あらゆる場所で焼き物を目にすることができます。
この町には人よりたぬきの方が多いのではないか、という話も出るほど、どこの窯を訪ねてもたぬきがわんさかいて、旅する人を温かく迎えてくれます。