■備前焼
数ある全国の陶器の中でも、焼き物の原点とも言える魅力を持っている備前焼、それは釉薬を使わずに焼き締めるという技法を1000年もの間、守り通してきたためでしょう。
備前焼に使われる土は耐火度が低いため、急激な温度変化を受けると破損しやすいという性質を持っていました。そこで、焼成にはじっくり時間をかけ、少しずつ薪を増やしながら温度を上げていく、という技法が生まれました。
このようにして、釉薬を使わず、念入りに高温で焼き上げた器は、華やかさこそないが、素朴な土味と落ち着いたしぶみが感じられます。
地味でありながらも備前焼が根強い人気を誇っているのは、やはり土をこねて作る、という焼き物の原点というべき魅力にささえられているからなのでしょう。
備前焼特有の装飾に「窯変(ようへん)」があります。
窯変とは、器が灰に埋もれたり、器同士がくっついてしまったりしてできる、いわば窯の中のアクシデントによる偶然の美しさのことです。
全国の陶器には施釉や絵付けにその特徴を見出せるものが多くありますが、備前焼の陶工は絵付けではなく窯変にエネルギーを発揮しました。
窯の中で灰が器に降りかかってできる自然釉は他の焼き物にもよく見られますが、これも窯変に含まれます。
備前焼では特に斑点状のものを「胡麻」と呼んで珍重します。
また火の近くに置いたために灰の量が多く、溶けて流れたものを「玉だれ」と呼びます。
ほかに「緋襷(ひだすき)」と言って、器と器がくっつかないようにワラを挟んだ部分が赤く焼け上がったものもあります。
器同士がくっついた部分が赤く染まるものは「牡丹餅(ぼたもち)」と呼ばれます。
もともとはアクシデントによってできた装飾だったが、その偶然に着目した陶工たちは、わざとワラを巻いたり、器を火の近くに置いたりと計算して窯変を生み出すようになりました。
しかしいくら計算をして装飾を施そうとしても、やはり偶然の要素がつきまとうのがまた窯変の魅力といってもよいでしょう。
岡山県の備前焼伝統産業会館周辺では、毎年10月に備前焼まつりが行なわれています。
ぜひお出かけになってみてください。
■萩焼
茶の湯の世界のわびさびなどはよくわからない、という人も多いと思います。
しかし全国の陶器を見ようと思うと、茶の湯の世界とは切っても切り離せないものがたくさんあります。
山口県に生まれた萩焼も、あかぬけしない、ぽてっとしたもたつきに親しみが感じられ、茶人たちに好まれる焼き物です。
萩焼のぬくもりある器肌は、土のあたたかみをそのまま伝え、ぼてっと分厚い印象ながら手に持つと意外に軽く、しっくり手になじむ柔らかさを備えています。
この感触は、大道土(だぢどうつち)という砂礫雑じりの浸透性に富んだ陶土の性質によるところが大きいでしょう。
また萩焼では登り窯で時間をかけて比較的低めの温度でゆっくり焼き上げるため、焼き締め度合いが弱く、なんとなく土の柔らかさを残したような焼き上がりになります。
それと同時に、一般の焼き物に比べて吸水性が高いのも特徴です。
萩焼をよく見ると、表面にこまかいひび(貫入)がたくさん入っています。
萩焼の茶碗などを長く使っていると、このひびから茶がしみ込み、器の肌色を微妙に変えたり、雨漏りのようなシミができたりします。
ひとつの器を長く大切に使うことで色艶が次第に変化し、独特の雰囲気をかもしだすことを「茶慣れ」「萩の七化け」などと呼ぶそうです。
全国の陶器が並ぶ中、萩焼の名陶として肌色の茶碗がぽつんと置かれているだけで、いかにも飾り気がないのも萩焼の特徴です。
粘土をぽっくりとかきとって、そのまま焼いたような素朴さが、飽きの来ない器として高い人気を得ているのでしょう。